I Saw Her Standing There

2014.04.21 Monday





高校二年生の頃の話だ



自分で言うのもなんなんだけど
学校でもそこそこ目立つ男前だった

決して一番ではない

しかし本人は学校どころか
街一番の男前だと思っている

だけど
それをひけらかそうとはしない

我慢しているのだ

その方がもっと男前に見えると
信じていたから

でもそれはきっと
見え見えだったはずだ

そんな訳で
友達は多かったが
敵も多かった



そんな僕はある転校生に出会った

彼女は父親の仕事の都合で
この街にやってきた

彼女は都会からやってきた

他のどの女の子とも違った

とても洗練されていて
側に寄ると花の香りがした

とてもいい匂いだ

それだけで僕はもうクラクラだ


他の生徒も同じだったに違いない

それを証拠に彼女の周りには
何とかして彼女に近付こうとする
男どもが沢山いた

彼女は女の子にも人気があって
そんな男どもから守ってくれていた


僕はプライドがあったから
そんな事はしない

遠くから見ているだけだ

そして目があったら目をそらす

僕は友達と教室でじゃれあいながらも
いつも目線は彼女



数ヶ月して
学校のダンスパーティーが
開催される事になった

だいたいは
女の子を誘って行くのだが
僕は彼女狙いだったので
誰も誘わなかった

男友達とくりだしたんだ


少し遅れて会場に着いた

ダンスフロアでは
沢山の男女が思い思いに
ダンスを楽しんでいた

僕は見回し彼女を探した

歩きながら探した

BARカウンターに行き
お酒を注文しながら探した

お酒を持って壁際へ
探した


そして彼女がいた


彼女は誰とも踊らず
友達の女の子と喋っていた

僕は彼女を見つめた

彼女を見ると
他の女の子となんて
踊る気がしない

彼女は僕に気付いてくれた

僕は尚も彼女を見つめた

今日は目を離さない

彼女も僕を見続けた

もう僕はくぎ付け

人も音も入らない

心臓がドキドキしているのが分かる

でもピンときたんだ

僕は彼女を本当に好きになると

見ていると彼女は
他のどの男の誘いも断っている

もう行くしかない


ダンスフロアを横切り
まっすぐ彼女の方へ

「ヤァー
元気かい?
今夜の調子はどうだい?」

「ハァイ
とっても楽しいわぁ
あなたは楽しんでる?」

「これから楽しむところさ
だから僕と一緒にどうだい?」

そう言って手を差し出した

一瞬の間が空いて彼女が笑った

そして
僕のその手を握ってくれたんだ

気分はどう?
どうって?
そりゃもう最高さ


そして僕達はダンスフロアへ

壇上では
バディホリーのロックナンバーが

会場は一気に盛り上がる

僕達は一晩中踊りあかした

彼女のカラダを
抱きしめながら
僕は思った

彼女を本気で恋してしまうと



あれから20年とちょっと

僕は結婚してもうすっかりパパさ

お腹の辺りには
余計な肉がたくさんついた

週末になると
家族みんなで山に行ったり
湖に行ったり
ホリデーを楽しんでるよ


彼女とはどうなったって?

ああぁ
彼女との思い出は最高だったさ

あの後
1年もしないうちに
また転校して行ったさ

あの時は
駆け落ちまで考えたよ

まぁしなかったけどね



今の奥さんとは
どこで知り合ったかって?



それは秘密だよ





アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア / ザ・ビートルズ


あの娘はちょうど17歳だった
俺の言ってること わかるだろ
それに彼女ときたら他と比べものにならないくらいイカシててさ

だからあそこに立ってるあの娘を見ちまったら
もう他の娘となんか踊れるわけないだろう

彼女もじっと俺を見てた
それでピンときたのさ
きっと俺はこの娘に惚れちゃうだろうって

あの娘はそこに立ったまま
ほかの男とは踊ろうともしなかった

フロアを横切って
あの娘の手を握りしめた時
俺のハートは高鳴ったんだ

俺たちは一晩中、踊りあかしたさ
しっかりと抱きあってね
案の定 俺はたちまち彼女に恋しちまった

だからあそこに立ってるあの娘を見ちまったら
もう他の娘となんか踊れるわけないだろう